竹取物語 現代語訳 御狩の御行 (二)

竹取物語 現代語訳 御狩の御行 (二)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 御狩の御行(みかりのみゆき) 第二回です。

 

 

本文
この内侍は、お帰りになって、事の次第を帝に奏上しました。帝は、お聞きになられて、

 

「多くの者が身を滅ぼしてしまう魔性なのだ」

 

とおっしゃって、かぐや姫についてお考えになることをお止めになったけれど、それでもやはり

 

お思いになられて、この女の目論見には負けまいとお思いになられて、勅命を

 

お下しになられました※1

 

「汝が所有するかぐや姫を参上させよ。

 

顔かたち良しと耳に入ったので使いの者を遣わしたけれど、その甲斐もなく、

 

会うことも叶わなかった。

 

このような不都合なことを習わしにしてよいだろうか」

 

と仰せになります。

 

翁はかしこまって、御返事を申し上げることには、

 

「このわたくしの娘が、いっこうに宮仕えに奉公しようともせずにいますことを、とても

 

気に病んでおります。

 

なんとか、かぐや姫に勅令を下達いたします」

 

と奏上しました。

 

これを御承知になってお言葉を賜りました。

 

「どうして、翁が養い育てたのに、思い通りにできないことがあろうか。

 

かぐや姫を、もし参上させたならば、翁に爵(かんむり)※2を、

 

どうして賜らないことがあろうか」

 

 

翁は、喜んで、家に帰って、かぐや姫と話し合うことには、

 

「このように、帝から勅命が下されました。

 

やはり早く宮仕えをさしあげてくださいませ」

 

と言えば、かぐや姫が答えておっしゃることには、

 

「決して、そのような宮仕えは、お仕え申し上げないと思っているのに、無理やり

 

お仕えさせようとされるのなら、死んでしまいましょう。

 

御官爵(みつかさかんむり)※3を頂けるとしても、死ぬほど堪えられないことです」

 

翁が返答することには、

 

「そのようなことをなさらないでください。

 

官位も、わが子を見てさしあげられないのでは、何にもなりません。

 

そうは言っても、どうして宮仕えをなさらないのですか。

 

死をお選びにならなければならない理由もないでしょう」

 

と答えます※4

 

 

「まだ虚言(そらごと)と思っていらっしゃるなら、宮仕えをさせて死なないでいるかどうか

 

ご覧になってください。

 

多くの人の熱心な御厚意に、報いなかったのです。

 

昨日今日、帝が仰ったから従おうとするのなら、世間の評判に身が痩せ細る思いです」

 

と言うので、翁が、答えて言うことには、

 

「官位のことは、ともあれ、かくもあれ、御命の心配こそ、たいへんさしさわるので、やはり、

 

お仕え申し上げることができないことを、参上して申し上げてこよう」

 

と言って、参上して奏上することには、

 

「いただいたお言葉のありがたさに、娘を参上させて宮仕えさせようと致しましたけれど、

 

『宮仕えに出せば、死にます』と申します。

 

造麻呂(みやっこまろ)※5が生ませた子ではございません。

 

昔、山で拾った子でございます。

 

このようであるので、気立ても、世間一般とは異なるのでございます」

 

と奏上してもらいました※6

 

 

(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 原文では省略されているけれど後の展開を見ればわかるとおり、

 

   竹取の翁を呼び出して、勅令(帝の命令)を翁に直接下している。

 

※2 爵を賜る、つまり叙爵する(従五位下の位の爵位を授けられること)を指す

 

※3 官職と位階

 

※4 原文:言ふ この文章の“いらふる”(社交的な返答)に合わせています

 

※5、6 この言葉の話し手は帝にお仕えしている人で、竹取の翁ではありません。

 

     “麻呂”という敬称が付いているのはそのため。

 

     庶民と帝が直接言葉を交わすのは許されない、当時のしきたり。

 

 

内侍と媼では会うことが叶わなかったため、帝は翁を呼び出して、勅令を下します。

 

爵位を与えられることを喜んだ翁ですが、かぐや姫は頑として聞き入れません。

 

ここでのやり取りで、かぐや姫の性格・考え方の一端が垣間見えます。

 

 

それにしても、勅令に反する返事をしなければならなかった翁は

 

生きた心地がしなかったことでしょう。