竹取物語 現代語訳 富士の煙

竹取物語 現代語訳 富士の煙 (最終回)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

いよいよ最終回、

 

竹取物語 富士の煙 です。

 

 

本文
そのあと、翁と、媼は、血涙を流して取り乱すけれど、どうにもなりません。

 

あの書き置きされた手紙を読んで聞かすけれど、

 

「何になろうか、命だって惜しくもない。

 

誰のために生きろというのか。

 

どんなことも役に立たない」

 

と言って、薬※1も飲まず、そのまま起き上がることもできないで、病の床に伏しました。

 

中将は、人々を引き連れて帰り参じて、かぐや姫を月の迎えの者と戦い留めることが

 

できなかったことを、帝に詳細に奏上しました。

 

薬の壺に御手紙を添えて差し上げました。

 

帝はそれを広げてご覧になって、ひどく悲しく思われて、何も召し上がりにならず、

 

芸遊びをすることもなくなりました。

 

 

大臣・上達部を集めて、

 

「どこの山が天に近いのか」

 

とお尋ねになると、ある人が奏上することには、

 

「駿河(するが)の国にあるという山で、この都に近く、天にも近くそびえてございます」

 

と奏上します。

 

次の歌をお聞かせになられて書き取らせ、

 

 

逢ふことも 涙に浮かぶ わが身には 死なぬ薬も 何にかはせむ♯1

 

 

あの差し上げた不死の薬を、また壺に入れて、勅使にお与えになりました。

 

勅使には、調石笠(つきのいわかさ)という人を任命して、駿河の国にあるという山の

 

山頂に持っていく勅令を、仰せになりました。

 

山頂ですべきことをお教えになりました。

 

帝の歌と、不死の薬の壺を並べて、火をつけて燃やす勅令を仰せになりました。

 

その勅令を承って、護衛の武士を多く引き連れて山へ登ったことによって、

 

その山を「富士の山※2」と名づけられました。

 

その煙は、今もなお雲の中へ立ち上り続けていると、言い伝えられています。

 

 

竹取物語 〜完〜

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 翁が常用していた薬のこと(気つけ薬かもしれない)

 

   不死の薬ではない

 

※2 “不死の薬を焼いた山”でなくて“士に富む山”が名前の由来

 

♯1 “涙”は“無”との掛詞

 

   歌の意味
   「逢うことも無くなってしまって涙にくれるわたしに、死ななくなる薬など

 

   何の役に立つのでしょう」

 

 

かぐや姫が月へ帰ってしまったあとの後日談です。

 

今は昔となったお話の、不死の薬と帝の歌を焼いた煙は今でも立ち上り続けている、

 

という言い伝えが、虚実の懸け橋になっています。