竹取物語 現代語訳 御狩の行幸 (三)

竹取物語 現代語訳 御狩の行幸 (三)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 御狩の御行(みかりのみゆき) 第三回です。

 

 

本文
帝が仰せになることには、

 

「造麻呂の家は、山の近くにある。

 

狩りの行幸(みゆき)のふりをして、見に行こう」

 

とおっしゃいます。

 

造麻呂(みやっこまろ)が申し上げることには、

 

「それは良い案です。

 

どうして難しいことがあるでしょうか、警戒もしていないで居ますので、不意に行幸されて

 

ご覧なさいますよう」

 

と奏上すると、帝は、突然日取りをお決めになって、狩りにお出かけになられて、

 

かぐや姫の家にお入りになってご覧になると、光に輝いて、

 

清らかで美しいたたずまいで座っている人がいました。

 

この人だろうとお思いになって、逃げて部屋へ入ろうとするかぐや姫の袖をお捕まえなさると、

 

かぐや姫は顔をおおっているけれど、初めによくご覧になっていたので、

 

二人といないと思えるほど心惹かれるお思いにならせたので、

 

「放しはしない」

 

と言って連れて行こうとなさるので、かぐや姫は、答えて奏上します。

 

「女の妖怪のわたくしは※1、この国に生まれてきたならお仕え申し上げたでしょうけれども

 

そうではないので、本当に連れ出すことは容易くはいかないでしょう」

 

と奏上します。

 

帝は、

 

「どうしてそのようなことがあろうか。

 

そうであっても連れて行こう」

 

と言って、御輿(みこし)をお寄せになると、このかぐや姫は、急に幻影の姿になりました。

 

思い通りにいかずに残念に感じて、本当にただの人ではないとお考えになって、

 

「そうであれば、御供として連れて行くのはやめよう。

 

元のお姿にお戻りなさい。

 

それを見て帰ることにしよう」

 

と仰られるので、かぐや姫は、元の姿に戻りました。

 

帝は、それでも心惹かれることを、せき止め難くお感じになられました。

 

このように会わせてくれた造麻呂にお礼の言葉を賜りました。

 

 

さて、帝とお仕え同行したもろもろの役人たちを盛大な供応してお仕え申し上げます。

 

帝は、かぐや姫を置いてお帰りになることを、いつまでも残念に思っていたけれど、

 

心残りをするような気持ちで、お帰りになりました。

 

神輿にお乗りになられた後に、かぐや姫に、

 

 

帰るさの 行幸もの憂く 思ほえて 背きてとまる かぐや姫ゆゑ♯1

 

 

かぐや姫の返し歌は

 

 

葎(むぐら)はふ 下にも年は 経ぬる身の 何かは玉の 台(うてな)をも見む♯2

 

 

これを、帝は、ご覧になって、ますますお帰りになることを空しくお感じになりました。

 

御心は、改めて宮廷に帰るまいと思うけれど、だからといって、夜をここで

 

明かすわけにもいかないので、お帰りになりました。

 

 

常にお仕え申し上げている人々をご覧になると、かぐや姫と肩を並べるほどの人はいません。

 

他の人よりは美しいと思っている人も、かぐや姫を思い出して比べれば、美人にも思えない。

 

かぐや姫だけが御心にかかって、そのまま独身でお暮しなさいました。

 

これといった理由もなく側室の方々ともお会いになりません。

 

かぐや姫の所にだけ、御手紙を何度も御通わしになられました。

 

かぐや姫のお返事は、勅令には拒絶されましたけれどもさすがに奥ゆかしく

 

文通※2をなさって、趣き深くも、草木を付けて歌を詠んで送りました。※3

 

 

天の羽衣 (一)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 原文:おのが 女性が使う場合、老女や妖怪の女を指す。変化の人であるかぐや姫

 

   を表す。この後の展開から妖怪とした。

 

※2 原文:交わし給いて お互いに何度もやり取りがある。

 

※3 この一文は主語が省略されています。

 

   尊敬語で書かれているため主語は帝としてもよさそうですけど、

 

   ・前文に“かぐや姫のもとにぞ”とあること

 

   ・“返り(手紙の返信)”とあること

 

   ということを理由に、書き手から見たかぐや姫の格が上がっっていると解釈しました。

 

   そのため、この文の主語はかぐや姫とします。

 

♯1 “背きて”は帝が後ろを振り返ることと、かぐや姫が勅命に背くことの掛詞

 

   歌の意味
   帰る時になって立ち止まって振り返ってしまうのは、かぐや姫がわたしの命に背いて

 

   留まるのでこの外出を物憂い気分にさせるのです。

 

♯2 “葎はふ下”と“玉の台”を対比させている。

 

   歌の意味
   つる草の這うような家で長年暮らしたわたくしが、どうして帝の住まう高楼に

 

   行くことができましょう。

 

 

帝の自尊語、書き手の尊敬語、書き手から見たかぐや姫の立場の変化と、

 

訳作業としてとても難しく、同時に楽しくもある場面です。

 

ストーリーとしてもロマンスあふれる場面でもあるので見どころ満載です。