竹取物語 現代語訳 御狩の行幸 (一)

竹取物語 現代語訳 御狩の行幸 (一)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 御狩の御行(みかりのみゆき) 第一回です。

 

 

本文
さて、かぐや姫の、容貌が二人といないほど非常に美ししいことを、帝がお聞き入れに

 

なられて、内侍司(ないしのつかさ)※1の女官・中臣房子(なかとみのふさこ)※2

 

おっしゃいます。

 

「多くの人の身をむなしいものにならせても結婚しないというかぐや姫はどのような女なのか、

 

あなたが行って、見て参れ」

 

とおっしゃいます。

 

房子は、承知いたして、参りました。

 

竹取の家は、命令を承り招き入れてお会いになりました。

 

媼に※3、内侍がおっしゃいます。

 

「帝の勅令に、かぐや姫の容貌が、たいそう優美であると耳に入れているので、

 

よく見てくるようにとの旨を、申し付けられましたので、参りました。」

 

と言うので、

 

「では、そのように申し上げてきます」

 

と言って部屋の中に入りました。

 

 

かぐや姫に、

 

「はやく、あの使者の方とお会いなさいませ」

 

と言えば、かぐや姫は、

 

「良い顔立ちでもありません。どうしてお会いできるでしょうか」

 

と言うので、

 

「見苦しいことをおっしゃらないでください。帝の御使いをどうしてなおざりにできますか」

 

と言えば、かぐや姫が答えることには、

 

「帝がお呼びになってそのようにおっしゃられても、恐れ多いとも思いません」

 

と言って、まったく会おうとはしません。

 

自ら生んだ子のように扱ってきたけれど、かぐや姫の前にはきまりが悪くて、ぞんざいな

 

感じでしか言えないので、思いどおりに咎めることができません。

 

 

媼は、内侍のもとに戻ってきて、

 

「情けないことに、この愚かな娘は、強情者で、決してお会いにならないつもりです」

 

と申し上げます。

 

内侍は、

 

「必ず見てくるようにとの勅令を受けているのに、見ることができないうちは、

 

どうして帰ることができましょうか。

 

国王の勅令を、この国で暮らす者で、承知致さないことがあるでしょうか。

 

道理の合わないことをなさらないでください」

 

と、相手が気後れするような言い方をするので、これを聞いて、ますます

 

かぐや姫は聞き入れるはずがありません。

 

「国王の勅令に背いているのなら、早く殺してくださってもかまいません」

 

と言います。

 

 

御狩の御行 (二)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 後宮十二司の一つ。特に掌侍(ないしのじょう)を指すことが多い。

 

   “内侍”は内侍司の女官の総称。

 

※2 中臣は祭祀を司る氏族。

 

※3 当時の女性は男性と会うことが品のないこととされていたので、中臣房子を

 

   接待するのは翁ではなく、媼となる。

 

 

古文では無視できない“帝”の登場です。

 

敬語の向き(対象)にいっそう注意が必要になってきます。

 

帝自身を指すときは自尊語になったりします。

 

 

今までの訳作業でも薄々気づいていましたが、会話が書き言葉で書かれているため

 

直訳にすると極めて不自然な文章になります。

 

このあたりは英語の会話文を日本語訳にする時とおなじですね。

 

 

“話し言葉”を“書き言葉”で書かれていることを意訳して自然な形に置き換えるのは

 

簡単だけど、古文の授業で叱られない訳をするのは難しいですね。