竹取物語 現代語訳 燕の子安貝 (一)

竹取物語 現代語訳 燕の子安貝 (一)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・燕の子安貝 第一回です。

 

 

本文
中納言・石上麻呂足(いそのかみのまろたり)が、家の使用人の男たちに、

 

「燕(つばくらめ)が巣作り※1を始めたら報告しなさい」

 

とおっしゃるのを、承知して、

 

「どのような目的がおありなのでしょうか」

 

と申し上げます。

 

答えておっしゃることには、

 

「燕が持っている子安貝※2を取ろうというのです」

 

とおっしゃいます。男たちが答えて申し上げます。

 

「燕を多く殺して※3見るけれども、腹の中にない物です。

 

ただし、子を産むときだけ、どういうわけか出してくるけれど、腹に隠れてわからないのです」

 

と申し上げます。

 

「人が見ようとすれば、なくなってしまうのです」

 

と申し上げます。

 

またある人が申しあげるには、

 

「大炊寮(おおいつかさ)※4の飯炊屋(いいかしや)※5の棟で、束柱※6ごとに、

 

燕は巣作りします。

 

そこに、まめな男たちを率いて、高所への足場を組んで巣の様子を見させていると、

 

そこいらで燕が、子を産むのではないでしょうか。

 

そのときにお取りになられてはいかがでしょうか」

 

と申し上げます。

 

中納言は、お喜びになって、

 

「すばらしい案です。少しも思いつきもしなかった。その気にさせることを申してくれた」

 

とおっしゃって、まめな男たち二十人ほどを遣わして、足場の上に待機させました。

 

お住まいから使いの者を絶えず送らせて、

 

「子安貝を、手に入れましたか」と尋ねさせました。

 

 

燕も、人が多く登ってきたために警戒して巣に戻って来なくなりました。

 

このような返事を申し上げたので、それをお聞きになられて、

 

どうしたらよいかと思い悩んでいると、大飯寮の役人の、倉津麻呂(くらつまろ)と

 

いう名の翁が、申し上げることには、

 

「子安貝を取ろうとお考えでしたら、ご相談申し上げます」

 

と言って、中納言のもとに参上したので、中納言は顔を合わせて向き合いなさいました。

 

 

燕の子安貝 (二)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 原文:巣構う(すくう)

 

※2 宝貝の一種で、当時は産婦が安産を祈って身に着ける習慣があった

 

※3 おそらく食用に捕らえていたのではないか? ただし燕を守り神とする文化もあったので、

 

   積極的に捕まえたとは思えない。

 

※4 宮内省に属する、米穀を収納し各官庁に分配する役所

 

※5 厨房の建物

 

※6 支柱のこと

 

 

五つの難題・最後の挑戦者の石上麻呂足:燕の子安貝です。

 

燕が子安貝を持っているなんておとぎ話のようだけど、人間が安産を祈願して子安貝を

 

身に着けるように、燕もまた、子安外を持つものと信じられていたのでしょう。

 

皆が疑いなくそう思っている程度に、当時の人たちは信心深かったのでしょうか。