竹取物語 現代語訳 竜の頸の珠 (三)

竹取物語 現代語訳 竜の頸の珠 (三)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・竜の頸の珠 第三回です。

 

 

本文
「それは良い案だ」と言って、

 

「舵取りの御神よ、お聞き入れください。愚かで、無分別にも、竜を殺そうと考えました。

 

今後は、髪の毛一本すら動かすことは致しません」

 

と、寿詞(よごと)※1をあげて、立ったり座ったり※2、泣きながら御神に

 

呼ばわっていらっしゃると、千回ほど祈り申し上げただろうか、しだいに雷は鳴り止みました。

 

少し稲光(いなびかり)がして、風はまだ強く吹いていました。

 

舵取りが言うことには、

 

「これは竜によって起こったことっだったのです。

 

この吹く風は、良くなる風です。

 

悪くなる風ではありません。

 

都合の良い方角へ向かって吹いています」

 

と言うけれど、大納言は、これを聞いても信じることはなさいませんでした。

 

 

三、四日吹いたり、吹き返したりして浜へ打ち寄せられました。

 

浜を見ると、播磨の明石※3の浜でした。

 

大納言は、南海の浜に吹き寄せられたのだろうと思って、嘆息し寝込んでしまわれました。

 

船にいた男たちが、播磨の国の役所に事情を告げて、国の司※4が見舞いに

 

訪ねて来てくださったけれど、起き上がることがおできになれないで、

 

船室で病の床に伏していらっしゃいました。

 

松原に御筵(おむしろ)※5を敷いて降ろしてさし上げました。

 

その時になって、南海の浜ではないと思って、なんとか起き上がりなさる様子を見ると、

 

風病(ふびょう)※6をひどく患っていて、腹は膨れ上がり、

 

両目は、それぞれスモモを付けたようでした。

 

この様子を拝見して、国の司も微苦笑み(ほほえみ)ました。

 

 

竜の頸の珠 (四)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 祝詞(のりと)のこと

 

※2 祈るときの所作・作法

 

※3 今の兵庫県明石市

 

※4 中央から派遣された地方行政官

 

※5 “筵”は敷物の総称。大納言のために敷くのでみすぼらしい物ではないはず

 

※6 神経疾患で、下半身不随症の総称

 

 

大嵐にあった大納言は船乗りの神に祈ります。

 

その祈りが聞き届けられたのか、急に嵐は静まります。

 

明石の浜に打ち上げられたけれど、大納言は失意のために南海の浜に漂着したと思い込みます。

 

大納言は命は助かったけれど、重度の病気にかかってしまいました。

 

 

国の司がそんな大納言を見て笑ってしまいます。

 

病気の人には同情するものだと思うけれど、ひょっとしたら大納言の横柄さを知っていた

 

からかもしれません。