竹取物語 現代語訳 竜の頸の珠 (二)

竹取物語 現代語訳 竜の頸の珠 (二)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・竜の頸の珠 第二回です。

 

 

本文
遣わした人は、夜昼とお待ちになっていましたけれど、年を超すまで何の知らせも

 

ありませんでした。

 

不安に思いながらも、忍耐して、舎人(とねり)※1二人を、取り次ぎ役として

 

お連れになって、目立たないようになさって、難波の辺りにいらして、

 

問い尋ねになさることには、

 

「大伴の大納言に仕える者が、船に乗って、その者が竜の頸の珠を取ったという

 

話しを聞いたことがありますか」

 

と尋ねさせると、船乗りは、答えていうことには、

 

「変なことをいう人だな」

 

と笑って、

 

「そのようなことをする船なんていませんよ」

 

と答えたので、

 

「臆病なことを言うなんて船乗りにあるまじきことだ。何も知らないのに、

 

このようなことを言う」

 

と思って、

 

「わたしの弓の力で、竜であっても、簡単に射殺して、頸の珠を取ってやろう。

 

遅れて来る奴らなど待つものか」

 

とおっしゃって、ご自分の船に乗って、海にお出になると、ずいぶん遠く、

 

筑紫の方角の海に船をお進めになられました。

 

 

それはあまりよくないことになりました。

 

強い風が吹き、空は暗くなって、船を激しくあおります。

 

どちらの方向を向いているかも分からなくなり、船を海中に沈めようと吹き荒れて、

 

波は船に打ち付けたり覆いかぶさったり、雷(かみなり)は船をめがけて落ちるように

 

閃くのを見て、大納言はうろたえて、

 

「今までこのような心細い目にあったことがありません。

 

どうしたらいいのでしょうか」

 

とおっしゃいます。

 

舵取りが、答えて申し上げます。

 

「多くの航海をしてきましたけれど、まだこのような心細い目にあったことがありません。

 

ご主人様の御船が海に沈まないのであれば、雷が落ちてくるでしょう。

 

もし幸いにも神の助けがあっても、南海※2に吹かれていくでしょう。

 

こんなひどい主人の下で仕えて参りましたために、みじめな死に方を

 

することになるのです」

 

と、舵取りは泣きます。

 

 

大納言は、これを聞いておっしゃることには、

 

「船に乗ったからには、舵取りが申すことこそ、絶対に頼りにするものです。

 

そのような頼りないことを申さないでください」

 

と、青反吐(あおへど)を吐きながらおっしゃいます。

 

舵取りは、答えて申し上げます。

 

「神でなければ、どんなたたりが働いているのでしょうか。

 

強風が吹き大浪は激しいうえに、雷までも頭上に落ちかかってこようとするのは、

 

竜を殺そうとお求めになるから、そのようになるのです。

 

疾風(はやて)も竜が吹かすのです。はやく、神にお祈りください」

 

と言います。

 

 

竜の頸の珠 (三)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 上級貴族に従う下級役人

 

※2 遣唐使の船が遭難して漂着した例の多い東南アジアあたりを指す。

 

   当時では世界の最果ての海という認識

 

 

いつまでたっても知らせがこないことにしびれを切らせて大納言・大伴御行自ら、

 

竜の頸の珠を取りに出発します。

 

船に乗ったものの見たことのない悪天候になり、経験豊富な船頭もすっかり

 

怖気づいてしまいます。

 

「竜のたたりに会うのは主人のせいだ」とわめく様子から、

 

変な上司に仕える苦労は、今も昔も変わりませんね。