竹取物語 現代語訳 蓬莱の珠の枝 (四)

竹取物語 現代語訳 蓬莱の珠の枝 (四)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・蓬莱の珠の枝 第四回です。

 

 

本文
「旅の空の下、助けてくださる方もいない所で、いろいろな病気にかかったり、

 

行く方向すらわかりません。

 

船が進むのに任せて、海をただよって、五百日たった午前八時ごろに、

 

海の中にちらりと山が見えました。船の中から目を凝らして見ました。

 

海の上に漂う山は、とても大きいものでした。

 

その山の様子は、高く壮麗でした。

 

これこそ、わたしが求める山だと思って、そうはいっても不安に感じて、山の周囲をまわって、

 

二,三日ほど様子を見ていると、天人の装いをした女性が、山の中から出てきて、

 

銀の椀を持って、水を汲んで歩いていました。

 

それを見て、船から降りて、『この山の名前をなんと言うのか教えてくれませんか』と尋ねます。

 

その女性が、答えて言うことには、「この山は蓬莱山です」と答えました。

 

これを聞いて、うれしいことうれしいこと。

 

この女性に、『そうお答えになるあなた様のお名前はなんとおっしゃるのですか』と尋ねます。

 

『わたしの名前は、うかんるり』と答えて、不意に山の中に入っていきました。

 

 

「その山は、見ると、絶対に登れそうにありません。

 

その山の側を通ると、この世のものとは思えない花の木々がありました。

 

黄金・銀・瑠璃色の水が、山から流れ出ていました。

 

その川には色とりどりの珠の橋が架けてありました。

 

その周りに、陽の光に輝く木々がありました。

 

その中で、これを持って帰ってしまうのは申し訳ないけれど、

 

『かぐや姫がおっしゃったものに違いない』と、この花を手折ってまいりました。

 

 

「山は限りなくすばらしい景色でした。このままにしておいて傷つけるべきではないけれど、

 

この枝を折って帰らなければ、そのほうがもっと気がかりなので、船に乗って、

 

追い風が吹いて、四百余日で、帰ってまいりました。

 

 

「まさに大願力※1です。

 

難波から、昨日都に上ってまいりました。

 

さらに潮に濡れた服も着替えないで、こちらへ参りました」とおっしゃったので、

 

翁は聞いて、心から同情して歌を詠みました。

 

 

くれ竹の よよの竹取 野山にも さやはわびしき 節をのみ見し♯1

 

 

これを、皇子が聞いて、

 

「多くの日数、気が滅入っていました心は、今日この日心が静まりました」

 

とおっしゃって、返し歌を詠みました。

 

 

わが袂 今日乾ければ わびしさの 千種の数も 忘られぬべし♯2

 

 

とおっしゃいました。

 

 

蓬莱の珠の枝 (五)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 神仏に願を立ること。

 

   この場合は願掛けが叶ったことを指す。

 

♯1 「よ」は竹の節と節の間のこと。この歌では「世」と掛ける。

 

   つまり「よよ」は「節々」と「世々(長い間)」を掛け言葉。

 

   また、下の句の「節」にも掛かる

 

   歌の意味
   「わたしは長年、野山で呉竹の竹取りをしてきたけれど、
    こんなにもつらい時があったでしょうか」

 

♯2 袂が濡れているのは「潮」と「辛苦の涙」のせい。

 

   歌の意味
   「わたしの潮で濡れた袂が今日乾いたように、辛くて流した多くの涙も
    今日、報われました」

 

 

庫持の皇子の冒険譚の続きです。

 

とうとう蓬莱の山に到着し、山の様子を見てきてように語ります。

 

その苦労話に竹取の翁は感に入ってしまいます。