竹取物語 現代語訳 蓬莱の珠の枝 (三)

竹取物語 現代語訳 蓬莱の珠の枝 (三)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・蓬莱の珠の枝 第三回です。

 

 

本文
この皇子は、「今更、何を言おうというのでしょうか」と言いながら、縁側からそっと

 

家に上がられました。翁は、当然のように思います。

 

「この国では見ることのできない珠の枝です。今回はどのようにお断り申し上げる

 

のですか。人柄も良い人でいらっしゃいます」などと座って言います。

 

かぐや姫が言うことには、

 

「親がおっしゃることを、ひたすらお断り申し上げることは不憫に思っていたのに」と、

 

取って来るのが難しい物を、このように浅ましく持ってきたことを忌々しく思い、

 

翁は、閨(ねや)※1の準備をします。

 

 

翁が、皇子に申し上げるには、

 

「どのような所に、この木はあったのでございますか?神秘的でみごとな、

 

すばらしいものです」と申し上げる。

 

皇子は、答えておっしゃるには、

 

「一昨々年の二月の十日ごろに、難波から船に乗って、海に出て、目的地も分からず

 

心もとなかったけれど、決意したことを成さないでどうして世に生きていけるだろうかと

 

思ったので、ただただ風に任せて航海しました。

 

この命死のうとどうしたというのか。

 

生きているうちは、今のように航海して、蓬莱という山を見つけようと、海を行き巡って、

 

この国を離れて航海していますと、ある時は、波が荒れ水底に沈みそうになり、ある時は、

 

風に吹かれて見知らぬ国に漂着して、鬼のような化け物が出てきて、殺そうとしてきました。

 

ある時は、来た方角も進む方向もわからず、漂流しました。ある時は、食料が尽きて、

 

草の根を食べ物としました。

 

ある時は、言うこともできないような恐ろしい化け物が来て、食いかかろうとしてきました。

 

ある時は、海の貝を取って、命をつなぎました」

 

 

蓬莱の珠の枝 (四)へ

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 寝室のこと。寝屋とも言う。この場合、新婚初夜を指す。

 

 

庫持の皇子は約束の珠の枝を持ってきて、結婚は確定とばかりに翁の家に

 

上がりこんでしまいました。

 

かぐや姫にとって、庫持の皇子との屈辱の対面です。

 

とはいっても、かぐや姫は帳や御簾の向こうにいて、扇で顔を隠していたことでしょう。

 

庫持の皇子はかぐや姫の顔を見ることは、叶わなかったはずです。

 

 

それはそうと、そんなかぐや姫の心中をよそに翁は新婚初夜の準備をいそいそと

 

始めてしまいます。