竹取物語 現代語訳 蓬莱の珠の枝 (一)

蓬莱の珠の枝 (一)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 五つの難題・蓬莱の珠の枝 第一回です。

 

 

本文
庫持の皇子(くらもちのみこ)は、深謀遠慮を巡らすことに長けている人だったので、

 

朝廷には、「筑紫の国へ湯治へ行ってまいります」と言って、休暇を申し上げて、

 

かぐや姫の家には、「珠の枝を取りに行ってまいります」と使いの者に言わせて、

 

都から出発されたときに、お仕えする人々が、みな難波(なにわ)までお見送りをしに

 

申し上げました。

 

皇子は、「人目に触れたくないので」とおっしゃって、お付きの人を多くお連れに

 

なりませんでした。

 

お側にお仕え申し上げる人だけお連れして船で出発され、見送りの人々は、

 

お見送り申し上げて帰りました。

 

お出かけになられたと人からご覧になられたので、三日ほど経ってから、

 

船を帰させられました。

 

 

以前より、この事を計画をお立てになられていたので、当時の、最高の技術を持つ

 

鍛冶工匠(かじたくみ)六人を雇い入れて、人が簡単に寄り付けそうもない家を造って、

 

かまどを三重に囲って、工匠たちを籠らさせ、皇子も同じところに籠りなさって、

 

所有されている限りの十六か所を空けさせ、上のほうにくどをあけて※1

 

珠の枝をお作りになられました。

 

 

蓬莱の珠の枝 (二)

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 原文:知らせ給ひたるかぎり十六所を、かみにくどをあけて、

 

   “を”は“あけて”に続くので、「知らせ給ひたるかぎり十六所をあけて」となります。

 

   “知る”は領有する・占めるを意味します。

 

   “十六所”はおそらく宝物庫と思います。

 

   “かみにくどをあけて”は難解な箇所とされています。

 

   ここでは角川ソフィア文庫の「新版 竹取物語」にならいます。

 

   なお、「くど」はかまどの煙を逃がす穴のこと。つまり煙突。

 

 

庫持の皇子の工房のくだりは訳をするのに頭を悩ませます。

 

というのは竹取物語は完全な原本(全巻そろったもの)が存在しないらしく、

 

写本や複数の本を組み合わせて底本(校正・翻訳などの土台となる本)としています。

 

写本も誤字が多く、どれがオリジナルに最も近いのか正確にわからないのです。

 

 

そのため、“十六所”も十二方となっているものがあります。

 

かまどを“四方八方”囲ったから十二方なのでしょうか?

 

三重に四方を囲ったから十二なのでしょうか?

 

また、“重六”という、さいころの6のゾロ目を指す言葉もあり、これも十二になります。

 

 

“かみにくど”も、「上にくど」や、「守の公帑(役人の倉庫)」といった解釈もあり、

 

昔からの訳の難所となっています。

 

そうなると“知らせ給ひたるかぎり”が「守に」にかかるようになります。

 

 

三重に囲まれたかまど、六人の工匠、(十二方)十六所と数字が連なるので、

 

“くど”も「九」という数字に掛けてあるのかもしれません。

 

だとすれば3の倍数として、「十六」より「十二」のほうが適切な気もします。

 

 

以上から※1の訳を差し替えるなら、

 

皇子は自分の職権・立場を濫用し、珠の枝の製作資金および材料のため

 

「自分が治める十二の宝物庫すべてと、配下の役人すべてに公帑を空けさせ」

 

となります。