竹取物語 現代語訳 五つの難題

竹取物語 現代語訳 五つの難題

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

今回は竹取物語 貴公子たちの求婚 第四回に相当します。

 

原文テキストの「角川ソフィア文庫 新版 竹取物語」では

 

仏の御石の鉢に含まれていますが、この場面までは貴公子たちの求婚に

 

含めたほうがいいと判断しました。

 

 

本文
日が暮れる頃、五人がいつものように集まりました。

 

ある者は笛を吹き、ある者は歌を詠み、ある者は口ずさみ、ある者は口笛を吹き、

 

ある者は扇を鳴らしたりしていると、翁は、家から外に出て行って言うことには、

 

「恐れ多くも、このような小汚いところに、長きにわたりおいでくださったこと、まことに

 

恐縮でございます」と申し上げた。

 

「『翁の命も、今日明日とも知れないので、このようにおっしゃってくださる

 

貴公子方のことを、よく考えてお仕え申し上げなさい』と申し上げれば『確かにそうです。

 

いづれも勝るとも劣らないでいらっしゃるので、愛情の強さを見定めます。

 

お仕え申し上げるのは、それで決めます』と言うのでこれは良い方法です。

 

恨み言もないでしょう」と言います。

 

五人の人々も、「それはよい」と言うので、翁は、家に入って伝えた。

 

 

かぐや姫は、「石作の皇子(いしつくりのみこ)には、仏の御石の鉢という物があります。

 

それをお持ちになってください」と言います。

 

「庫持の皇子(くらもちのみこ)には、東の海に蓬莱(ほうらい)という山があります。

 

そこには銀を根っことして、黄金の茎、白い真珠を実にならせて立っている木があります。

 

それを一枝、お持ちになってください」と言います。

 

「阿部の右大臣※1には、唐土(もろこし)にある火鼠の皮衣を頂きたい。

 

大伴の大納言には、竜の頸に五色に光る珠があります。

 

それをお持ちになってください。

 

石上(いそのかみ)の中納言には、燕(つばくらめ)が持っている子安貝を、

 

お持ちになってください」と言います。

 

翁は、「それは難しいことです。

 

この国にある物でもございません。

 

こんな難題を、どうやって申し上げればよいか」と言います。

 

かぐや姫は、「どうして難しいことがあるでしょう」と言うので、

 

翁は、「とにかく、申し上げてみましょう」と言って、出て行って、

 

「これこれこういうことです。お聞きになられたようにご覧にいれていただきたい」

 

と言うと、皇子・上達部(かんだちべ)※2たちはそれを聞いて、

 

「穏やかに、『この辺りだけでも、どうか歩かないでください』とおっしゃらないのか」

 

と言って、嫌になって、皆帰りました。

 

 

仏の御石の鉢

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 原文:いま一人には、 阿部御主人(あべのみうし)だけは個人名が出ていません。

 

   他の表記に倣っています。

 

※2 “かんだちめ”とも読む。太政大臣・右大臣・左大臣・大納言・中納言・参議および

 

   三位以上の者を指す。

 

 

当時は女性が男性と会話することは、はしたないこととされていたので、翁が貴公子と

 

かぐや姫の伝言役を務めています。

 

一般庶民が、天下の為政者に難題を依頼する。

 

かぐや姫の無茶ぶりに翁の心痛が伺えます。

 

それにしてもかぐや姫もしれっと難題を吹っ掛けるあたり、本当に結婚する気はありません。

 

「何か難からむ(原文)」

 

という言葉に、わがままな性格も垣間見えます。