竹取物語 現代語訳 貴公子たちの求婚 (三)

竹取物語 貴公子たちの求婚 (三)

訳者まえがき

 

ここに掲示されている訳は「逐語訳」です。

 

直訳に近いので、不自然な文章になっている部分があるのはそのためです。

 

高校生時代の授業の記憶や古語辞典を頼りに訳しています。

 

 

竹取物語 貴公子たちの求婚 第三回です。

 

 

本文
これを見て、翁が、かぐや姫に言うことには、

 

「愛しいわが子よ、変化の人※1(以下、神仏の生まれ変わり)と申し上げながら、

 

この大きさまで養わさせていただいた親心はとうてい言い尽くせません。

 

爺の申し上げることを、聞いていただけますか」と言うと、

 

かぐや姫は、「どうしておっしゃることを承知しないことがあるでしょうか。

 

わたしは神仏の生まれ変わりである身だとは思ってもいないので、

 

大事な親と慕い申し上げております」と答えました。

 

翁は、「嬉しいことをおっしゃてくださる。爺も、もう七十歳を越えました。

 

今日とも明日とも知れない命です。世間では、男性は女性と結婚するもの。

 

女性も男性と結婚するもの。そののちに、一門が栄えてゆきます。

 

どうして結婚をしないでいられましょう」と言いました。

 

かぐや姫がおっしゃることには、「どうして結婚などいたしましょう」と言うと、

 

「神仏の生まれ変わりといっても、女性の身持ちでいらっしゃいます。

 

爺が生きている間は、こうしていられるでしょう。あの方々が、年月を重ねても、

 

このようにおいでになり求婚されることを、よく考えて、あの方々のうちのお一人と

 

結婚して差し上げてくださいませ」と言えば、かぐや姫がおっしゃることには、

 

「良くもない顔立ちや、性根も知らないで、浮気でもされたなら、後になって

 

きっと悔しい思いをすることになるだろう、と考えているのです。天下の貴人で

 

あっても、本性を知らないのでは、結婚をするのは難しいと思っています」

 

と答えます。

 

 

翁が言うことには、「想像どおりのことをおっしゃいます。そもそも、どのような

 

御心のある人となら、結婚しようとお考えですか。これほど熱心な方々で

 

ございますが」。かぐや姫がおっしゃることには、「どれほどの深い御心を見ようと

 

言うのでしょうか。ほんの少しのことです。あの人らのお気持ちはだいたい同じ

 

くらいでしょう。どうして優劣がわかるでしょうか。五人の中で、見たいと思っている物を

 

見させていただける人が、お気持ちが秀でているとして、お仕え申し上げると、

 

そこにいるだろう人々に申し上げてください」と答えます。「それはよいことです」と

 

承知しました。

 

 

五つの難題

 

竹取物語
(原文:角川ソフィア文庫 新版 竹取物語より)

 

 

 

訳注
※1 “変化の人(へんげのひと)”とは神仏が仮に人間の姿になって現れること。
   仏教用語で、固有名詞として訳さなくてもいいと考えたけれど、現代文では
   変化(へんか)と誤読しそうなので訳しました。

 

 

結婚してほしい親と結婚したくない娘との会話。

 

竹取物語の成立は869年〜905年の間と推定されるらしいのですけれど、

 

かぐや姫や翁の言い分は現代でも納得できる理由です。

 

こういう発見があるから、古典はおもしろいと思うのです。